2021年10月30日(土)I-siteなんばにある「まちライブラリー@大阪府立大学」でアカデミックカフェが開催されました。カタリストは大阪府立大学 高等教育推進機構の稲垣 スーチン准教授。テーマは「どうすれば英語ができるようになるか―習得プロセスと効果的学習法―」です。
「英語を勉強したいけど、学習法がわからない」という方は、少なくないと思います。英語を習得するために、問題集や単語帳で勉強した方や、英会話教室に通った経験をお持ちの方も多いのでは? 実は語学の習得には「第二言語習得論」に基づく実践が有効だと稲垣先生は提唱します。今回は「英語が読める」だけでなく「英語が書ける、話せる」といった英語を使える状態になるための効果的な学習法について、稲垣先生よりお話しいただきました。
会場には、英語に興味のある受講者が集まりました。「講演を機に、もう一度英語習得に取り組みたい!」という方もいれば、英語で自己紹介ができるレベルの方も。家族との海外旅行をきっかけに英語に興味を持ったという14歳の女の子も参加してくれました。
さあ、それでは、Let’s Study English!
まずは「日本人にとってなぜ英語は難しいか?」という根本的な問題について。1つは母語の影響。母語と第二言語の距離が近いほど習得は易しく、遠いほど難しいとされています。皆さんご存知のように、日本語と英語では、主語・述語の置き方など言葉の成り立ちそのものが異なりますよね。次にインプットの不足。日本では英語は外国語であり、教室以外で英語に触れる量が圧倒的に少ない環境にあります。それに伴う、アウトプットする機会の少なさも同様。その他、英語を習得する動機の弱さや、教え方の問題などが挙げられます。ではどうすれば英語ができるようになるのか?
「インプットを増やす → インテイクを増やす → アウトプットを増やす」
これが言語習得の基礎プロセスです。
日本で英語力をつけるには、平易なレベルの英語の本を「多読する」ことが最適。本ならどこでも読めますし、自分のレベルや好みにあった本を選べるので楽しく実践できます。そしてこれがポイントなのですが、易しいレベルの本を継続してたくさん読むことで、大量の英語に触れることができて、インプット不足を解消できます。
多読によりインプットした英語は、声を出して意味を踏まえながら行う「音読」により「インテイク」(語彙や文法を頭に取り込むこと)へと変えます。そして最後にアウトプット。英語原稿の音読を行った後に、原稿の空欄部分を埋める「穴あき音読」や、原稿内のキーワードを基に本文の内容を口頭で説明する「Retelling」、または書く「Rewriting」があります。
講義では、音読を中心とした学習法を受講者が実際に体験。稲垣先生から指名されて質問に答えるという、学校の授業さながらの緊張感が漂う時間でした。熱心にメモを取る方も多く、英語学習のヒントを少しでも持ち帰ろうと皆さん集中していました。
「インプットを増やし、音読してインテイクを増やし、アウトプットを増やす。これが大事。英語を話す相手がいなくても、日常生活において英語に触れることは毎日できます。あとはなるべくチャンスを見つけて、実際に英語を使ってみること。英語を簡単に話せるようになる秘訣はないのよ! やるしかない!」と稲垣先生は笑顔で背中を押してくださいました。
『多読』のための本は、多くの学校で英語力アップの教材として採用されています。簡単なレベルのものでよいから、たくさん英語に触れることが大切です。英語力アップに少しでも興味のある方は、まずはこの方法で英語に接してみてはいかがでしょう? 毎日楽しく続けることがコツですよ!
<稲垣先生がご紹介された本>
●『國弘正雄の英語の学びかた』/たちばな出版
國弘正雄 著
https://www.tachibana-inc.co.jp/detail.jsp?goods_id=2069
●『日本の大学英語教育における多読の効果』/一粒書房
稲垣俊史・稲垣スーチン 共著
http://www.ichiryusha.com/book/index.php?main_page=product_info&cPath=23&products_id=637
※アカデミックカフェは、新型コロナウイルス感染拡大の影響を考慮して、ソーシャルディスタンスを施した座席の配置を行い開催しました。参加者には、体調や生活に関するアンケート記入をお願いし、入口での検温・消毒など予防対策を徹底しました。
【取材日:2021年8月20日】※所属は取材当時