テレビ出演やショー、レクチャーなど日本のみならず世界で活躍するプロマジシャンRyu-ka(リュウカ)さん。マジック界のオリンピックといわれる大会「FISM(フィズム)」のASIA Championshipでは2014年度、2017年度の2大会連続で日本代表として出場しています。
世界で活躍するRyu-kaさん。なんと大阪府立大学経済学部(現:現代システム科学域マネジメント学類)の卒業生です。
今回はRyu-kaさんにマジックを始めたきっかけや、大学を卒業する意味など様々なお話を伺うことができました。
【マジックとの出会いから大学受験まで】
‐マジックとの出会いを教えてください!
幼少期のころからおもちゃ屋さんで売っているマジック道具は買ってもらっていました。
でもそれは、あくまで遊び道具・おもちゃの一つという認識で、真剣にマジックを始めたわけではありませんでした。
真剣に始めるきっかけとなったのはおばあちゃんの一言。
中学1年生のころおばあちゃんとマジックの番組を見ました。私は全くタネがわからなかったのですが、おばあちゃんに聞くと「私はわかった」と。教えて!といっても教えてくれず、それが悔しくてタネを解明しようと図書館へ通うようになりました。
図書館にはマジックのタネを解説する本が何冊もあり、さらには一つのマジックに対しても基礎から応用、そのまた応用と天井がありませんでした。
初めはおばあちゃんがわかって自分がわからないという悔しさから始めたマジックだったのですが、一度マジックの世界に足を踏み入れてしまうと奥が深すぎて私の知的好奇心を常に刺激してきました。
そして、今では自分で新しいマジックを作り、誰かに刺激を与える側にまわっています 笑
–大学を目指すきっかけは何だったのですか?
中学卒業時にはプロマジシャンになろうと考えていたので、高校には行かずハリウッドに行こうと考えていました。
しかし、父が大反対。「高校には行っておけ。選択肢が増えて、つぶしが利くから」と。
私は選択肢が増えようが、つぶしが利くようになろうが、マジシャンとして成功するのだから意味が無いと思っていました。しかし、中学生一人の力では単身ハリウッドに行くこともできず、どうしようもなかったので高校へ進学しました。
高校卒業時に改めてプロマジシャンになると両親に直訴。
しかしここでも父は大反対。「大学には行っておけ。選択肢が増えて、つぶしが利くから」と。
いやいやいや、話が違うだろう。高校を出れば認めてくれるのではなかったのか。やっとプロマジシャンになれると思っていたのに!
しかし、よく思い出してみると、父は高校を出ればプロマジシャンになることを認めるとは一言も言っていませんでした…。
こうなれば誰からも反対されない状況でプロマジシャンになってやろう。そう考えました。
誰もが認める大学に入学し、たくさんの選択肢がある中からマジシャンを選ぼう。自分はマジシャンになるしかなかったのではなく、選んでマジシャンになったのだ。ということを証明してやろうと考えたのです。
実家からは出たかったのですが、生粋のおばあちゃん子だった私はおばあちゃんに何かあればすぐに帰れる場所がいいということで大阪の大学を探しました。
高校の先生からは阪大を目指せといわれたが、阪大に魅力は感じず、その勉強をするくらいならマジックを練習したいと思うような学生でした。
府大の経済学部は数学の配点が高いことを知ったため、理系だったのですが文転し経済学部を受験しました。
【大学時代について】
-大学時代はどのような学生生活を過ごされましたか?
経済学部に入ったもののそもそも理系ということもあり、経済学を学びたいという気持ちはすぐには起こりませんでした。入学後、大学デビューもせず、すぐに休学。
昼は喫茶店のアルバイト、夜はマジックバーで働き社会人のような生活を送っていました。
そのような生活をしていると、アルバイトでも大卒の初任給くらいの給料をもらうことができました。親はつぶしが利くといっていたがすでに稼げている。本当に大学を出る意味があるのか?と一度は大学をやめることも考えましたが、ここで逃げ出すようにやめてしまうと結局両親は認めてくれない。自分のわがままを通すのではなく、すべてを乗り越えた上で自分の好きなことをやる人になろうと大学は卒業しました。
今は両親共にファン1号として納得した上でマジシャンの道を応援してくれていますし、テレビに出演しようものならご近所さんに言いふらしているようです。笑
-大学生活で思い出に残っていることはありますか?
大学では二人の大事な人に出会いました。
一人は恩師との出会いです。現在はご退職されていますが、ミクロ経済学の渡辺茂先生にはお世話になりました。
ひょんなことからマジックを見せる機会があり、そこから意気投合。渡辺先生の授業はすべて受けましたし、卒業論文も渡辺先生の下で「カジノの合法化」について書きました。
もう一人は同じ奇術部に所属していた友人です。ここでは仮に田中君としておきましょう。
田中君はマジックではなくジャグリングで世界大会出場を目指していました。
身近に世界を目指す人がいたのは刺激的で、ジャンルは違いましたが彼とは常に切磋琢磨していました。
-進学に興味が無かったということですが、改めて今大学を出てよかったと思いますか?
今は、大学を出て本当によかったと思っています。
もしかすると皆さんも進学の時に「つぶしがきくから、選択肢が増えるから進学しておけ」と周りの人からいわれたことがあるかもしれません。自分の夢がはっきりしていればはっきりしているほど逆に進学することや大学の学位に魅力を感じないこともあるでしょう。
私もそう思っていた人間の一人でしたが、今は改めて「大学を出て本当によかった」と感じています。
理由は2つで、まず1つ目は、受験という競争社会で勝ったという成功体験。
大阪府立大学は全国でも上位に位置する大学なので、この大学に入学できたということはマジシャンになった今でも自分に対して自信を持つことができている理由の1つになっています。
2つ目は、マジシャンとして選択できる行動の幅が広がったということ。
選択肢が増えるというのは、職業の選択が増えるだけでなく、その職業の中でとることのできる選択肢が増えるということでもあったのだと気付くことができました。
学と知識というのは大事で、自分の隠れたバリューになります。優れた大学を出ているとそれだけで常識のある人間だというラベリングがされ信用されます。大学で学んだ知識は、経営者や政治家の方とお話しするときには話のネタになります。
これは、中学を卒業後すぐマジシャンになっていてもできていたかと聞かれると答えはNOで、大学を出たからこそできた繋がりはたくさんあります。
【社会人生活について】
‐現在、日本初のスポンサードマジシャン(※)としてご活躍されていますが、その経緯を教えてください。
これだけプロマジシャンになると言っていたにもかかわらず大学を卒業してすぐは一般企業に就職しました。
もしかしたらプロマジシャンになるよりも良い選択肢があるのではないかと思い数社だけですが就職活動をしました。そのときに出会ったのが今のスポンサー企業の1つである株式会社Rise UP。
「伝説の一期生募集!」というキャッチコピーに運命を感じ、すでに持っていた東証1部上場企業の内定を蹴り、Rise UPに入社しました。
Rise UPのビジョンが「世界をつなぐエンターテイメントカンパニーを創る」まさに私がマジックを通して成し遂げたいことそのものでした。
マジックを製作する経験を活かしながら、2年間の業務の中で、多くの0to1を行いました。仕事自体はクリエイティブで面白いものでしたが、やはり自分はマジックを通して人を楽しませたいと退職を決意。
会社に退職の意思を伝えました。
しかし、ありがたいことに会社から猛烈に引き止められ、自分の好きなコトが会社にも生かせるならというWin-Winな条件で同じ正社員待遇のまま勤務日数を減らしてもらいました。
それでもやはりマジックで社会に貢献したいという気持ちが強くなり、どうすればマジックだけをやっていけるかを考えました。
そんなときに思い浮かんだのが、スポーツ選手。彼らは、企業にスポンサーとしてついてもらい、自分の競技に集中してスポーツを通して社会に価値を生み出しています。
すぐ行動に移し、2017年6月にスポンサードマジシャンとして活動を開始。現在は、もともとの勤め先であったRise UPをはじめ、革小物や衣服、WEB製作の企業などにもスポンサーについてもらっています。
‐これからの目標を教えてください。
マジックとビジネスを掛け合わせて社会貢献、業界貢献をする人間になることを目指しています。
春からは、マジックと教育を結び付けた事業をスタートする予定です。
マジシャンを育てることが目的ではなく、マジックを通して得られる成功体験を小さなころから感じてもらうということを目的としています。
安定しないと考えられがちなマジシャンという職業ですが、マジックに触れたことがない方々にマジック教室などの活動を通してマジックと接してもらう機会を増やし、そしてマジシャンが働ける環境を作ることで、将来子供たちがマジシャンという職業を目指しても応援される社会になると考えています。
取材後、広報課にてマジックを披露していただきました。
世界レベルの生マジックに広報課職員、MICHITAKERs 一同仰天!次の日までRyu-kaさんのマジックの話で持ちきりでした。
Ryu-kaさん、ありがとうございました!
【リンク】
・日本代表マジシャン Ryu-ka選手 スポンサー契約のお知らせ|Rise UP Inc.
・6年前の動画の撮影場所は皆さんも見覚えのあるあの場所…!?
▼YouTube|Ryu-ka
・TEDxYouth@Nambaスピーカー紹介|Ryu-ka
(※)スポンサードマジシャン:企業からスポンサー契約を受けて活動するマジシャン。企業とスポンサー契約を結ぶことは、スポーツ選手では一般的だが、マジシャンではRyu-kaさんが日本初。
【取材日:2018年2月15日】【取材:マネジメント学類 右大輝】