今回は、生命環境科学域 応用生命科学類 生命機能化学課程の生体成分実験にお伺いました。
この授業は生命機能化学課程において行われる実験の基礎となる生体分子の抽出法・定量法・活性測定法・電気泳動法・遺伝子取り扱い法等の基本原理と操作を習得する事を目標に行われています。
【授業内容】
取材当日2018/6/13、第7回目の授業は「ELISA法によるタンパク質の分析」でした。
ELISA法とは?
ELISA(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay)法とは試料中に含まれる抗体や抗原の濃度を検出・定量する際に用いられる方法です。放射免疫測定と比べて放射性物質を用いない為安全性が高く、安価で簡便である為、現在微量タンパク質や感染微生物抗原の検出・定量に広く用いられています。
今回は、試料中に含まれる卵由来のタンパク質を分析する実験で、食品中の卵アレルゲンの検査などにも用いられるELISA法です。
よく似た形状の豆腐と卵豆腐をそれぞれミキサーにかけて抽出した液を専用のプレートに入れ、どちらが豆腐か卵豆腐かわからない状態で卵由来タンパク質(卵白アルブミン)だけに反応する抗体を入れて反応させさらに別の抗体を入れて反応させ、卵成分のみを発色させて、どちらに卵成分が含まれるのかを見分けます。
この実験方法は食物アレルギーを調べる方法でもありますが、病気の陰性陽性を調べたり、インフルエンザ・ノロウイルスなどの疾患診断にも利用されます。
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じっと待つもの実験のうち!
反応させたタンパク質をプレートへ固定させる為にブロッキング剤を入れて室温で40分放置、抗体と抗原を反応させる為に室温で60分放置、さらに反応をさせて室温で40分放置する時間も、実験室から離れずに、見守ることになります。
この待ち時間の間に学生さん達は、次の授業の予習をするそうです。(偉いっ)
さて、この反応が出るまでの待ち時間を使い、学生さん達に色々とお話しを聞いてみました。
【この授業の面白さは?】
授業は難しいですが楽しいです。
大学に入ってから、学ぶ内容が高度になり、一気に詳細な知識がますます必要になります。
授業に追いつく事で精一杯ですが、実験では、以前学んだ原理を現実に目にする瞬間があるので楽しいですね。
実験はひとつひとつの作業が細かく、マイクロ単位で行うものもあり集中力が必要なので精神的な疲労が付き物です。終わったらおなかが減ります。(笑)
余談ですが、今回のような実験では、マイクロピペットを使って液体を移すのですが、他の液体が混ざらないために使い捨てのチップを外す瞬間に、えも言われぬ気持ちよさがあって好きです。(笑)
【なぜ府大を受験されたのですか?】
高校時代では生物や化学の授業が好きでした。物質よりも生体反応や動物の仕組みに興味があり、将来は製薬関係の仕事に就きたいと思い府大の生命環境科学域 応用生命科学類を受験しました。
農学部とは少し毛色が違い、理系科目でこれだけ生物・化学に特化して色々な事が出来る学域学類は少ないと思います。高校で学んだ事が基盤になり、大学で応用し自分の好きな事を勉強できるのはとても楽しいです。
【今後の目標を教えて下さい】
以前授業で各々が土を持ってきてその中にいる微生物を探す実験があり、とても面白かった事を覚えています。2015年 ノーベル生理学・医学賞を受賞された大村智さんはゴルフ場から土を持ち帰り、その中に新種の放線菌Streptomyces avermitilisを見つけ寄生虫感染症を治療するイベルメクチンを開発しました。
将来は大村教授の様に、まだこの世で発見されていないものを見つけてみたいですね。
【赤川先生から一言】
私自身の教育目標は高度研究型大学と銘打つ大阪府立大学にて研究者の養成に注力する事です。研究者には専門的な技術や知識はもちろん、好奇心や創造性が大切だと思います。
学生たちが自分で考えていく中で、その結果新しい発見に結びついたりすると、自分事の様に私も嬉しいですね。
今年の3回生はとても優秀に思います。
真面目で従順と言いますか、実験・化学が好きな学生が多いように感じます。
府大への受験を考えている高校生の皆さんも、実験や科学を純粋に好きな人、そんな人達に是非来てほしいと思います。
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マイクロ単位からとても大きな可能性が発見される生体成分実験。
白衣に身を包んだ学生達は、インタビュー中は終始和やかに話してくれていましたが、実験が始まると顔は真剣そのもので、とてもメリハリがありました。
先生から優秀な学年と褒められるのも納得です。
これからもますます授業が難しくなり、大きな壁に当たる事もあるでしょうが、真剣に楽しみながら頑張ってほしいです。
【取材日:2018 年6月13日】 ※所属は取材当時