student102015年12月8日、りんくうキャンパスで学ぶ生命環境科学域 獣医学類2年生の生化学実習にお邪魔しました。
この実習は2年生で開講される「獣医生化学A・B」で学習する、動物の生命現象を担う主な生体成分の性質と働きについて、その理解と洞察を深めることを目的として行われます。また3年次以降の実習等に必要な機器の基本的な扱い方を習得します。

この日の実習内容は「分光光度計を用いた吸光度分析および物質定量(以下、分光分析と表記)」と「ゲルクロマトグラフィーの原理と応用(以下、ゲルろ過クロマトグラフィーと表記)」でした。 44名の学生が3~4名ずつの班に分かれ6つの班が分光分析を、残り6つの班がゲルろ過クロマトグラフィーを行います。
竹中先生の「では始めてください。」という声掛けで実習がスタート。

竹中重雄准教授

竹中重雄准教授

-分光分析
黄色いビタミンB2を薄めたサンプル溶液を作り、分光光度計を使って出される数値を用いて溶液の分子吸光係数(濃度を求めるための数値)を算出するという実習です。(この分子吸光係数を求める比例計算は、文系の広報担当者からすると非常に複雑な計算に見えました。)

求めた数値が正しければ比例グラフができるはずなのですが・・・学生にとっても受験勉強以来取り組む計算だったのでしょうか、スマホの計算機能を使い苦労して計算している様子です。そのような計算方法に悩んだ学生に救いの手を差し伸べるのが、インドからの留学生でTA※をしているゴータムさん。日本語はほぼ話さないゴータムさんの指導を受ける学生が、不慣れな英語を交わしながらコミュニケーションしている姿が印象に残りました。
※TA(Teaching Assistant)は学習支援を行う大学院生スタッフ

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gouthamTAのゴータムさん
インドのバンガロール大学を卒業し研究所に数年勤めた後、1年前に来日。
「日本の学生はシャイですね。でも伝えたことを良く理解してくれます。」と
学生の印象を教えてくれました。

 

サンプル溶液の計量にはピペットマンという実験機具を用います。今回の実習だけでなく今後も必須となるのがピペット操作の習熟だそうです。実習の合い間に広報担当者もピペットマンを触らせていただきました。学生の1人が指導役となり、素人相手に専門用語を使わず丁寧に説明してくれました。実習中に時間を使ってくれてありがとうございました。

ピペットマンでの溶液計量

ピペットマンでの溶液計量は慎重に

学生写真

実験が終わった班から解散。早々フィニッシュ!

-ゲルろ過クロマトグラフィー
color大きさの異なる分子の混合物が、水で膨張したゲル粒子を入れたガラスカラムという筒状のガラス器具を通過することで、大きな分子から順ににじみ出る現象を利用した化学物質を分離する手法のことです。実習では大きさの異なる分子が含まれる赤、青、黄色の三色の試料を混合して、再度それぞれを分離させました。

この実習、ゲル粒子を実験に使える状態にするために2時間ほどかかります。ゲル粒子と水が分離してゲルの高さが約15cmになるように、ただただ待つ時間もあり、その間は班の仲間と話したりレポートをまとめたりと先生は学生の自主性に任せているようでした。今回の取材に同行していた元研究者でもある広報担当理事の学生時代には、待ち時間にテニスをしていた・・・という話もあったそうです。理系の誰もが経験していると思われる“実験の待ち時間”、さまざまな過ごし方があるようです。

ゲル粒子を実験に使える状態に準備する写真

ゲル粒子を実験に使える状態に準備

先生が質問している写真

待ち時間には先生からの突然の質問も・・・

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1.準備が整ったら三色の試料を0.5mlずつ混ぜ、この試料混合液をゲル上面を乱さないようにゲル上に重ねていきます。
2.試料混合液をゲル内へ浸透させます。
3.一度混ざった液体が元の赤、青、黄色に分かれて出てくる様子はとても不思議でした。
4.試料混合液がゲル内に完全に浸透したら、試験管で2mlずつカラムからの溶出液を採取し、各試料が最も濃く溶出されるまでの容積を記録します。

ここで実験終了。長時間お疲れさまでした。

実習後は結果のレポートと与えられた課題に対する考察をまとめます。
「考察をまとめることで研究者として考える力や想像力を育んでもらいたい。例えばゲルろ過クロマトグラフィーの原理は人工透析の仕組みにつながっているから、いま学んでいることは先々の下支えになっているということを感じながら日々過ごしてほしい。」と竹中先生は話します。

未来の獣医師・研究者をめざして、がんばれ学生たち!

【取材:下山陽子(広報課)】※所属は取材当時
【取材日:2015年12月8日】