植物病理学とは植物の病気についての科学。近年は宿主植物と病原微生物との相互関係についての研究が進み、農作物保護の応用面ばかりでなく「植物科学の基礎」として重要性も高まっている分野です。
大阪府立大学では応用生命科学類 植物バイオサイエンス課程(生命環境科学域)の学生が主に2年次に受講する授業として「植物病理学」を開講し、東條 元昭教授と望月 知史講師が担当しています。
この講義では学部生(府大では学域生)として知っておくべき植物病理学の基礎として、教科書やレジュメに沿って「病原と病気の発生」「植物の伝染病と生理病」「診断と病気の管理」などの項目を学んでいきます。日本語と英語によるディスカッションを交えて学んでいくことも特徴のひとつです。
取材したこの回は「線虫病と生理病について」の講義でした。線虫の分類と形態、線虫による病気について、また生理病について等を学び、理解していきます。
「さて、線虫とはどんなものでしょう?」冒頭、線虫の画像がプロジェクターに映し出されます。大きさは1mmから2mm程度、ミミズと違い筋肉質で自分の体をグッと持ち上げて動くイメージです。
その後、受講生には重要なポイントが空白になったレジュメが配られます。東條教授が空白部に入る重要キーワードをホワイトボードに板書しながら解説を進め、線虫がどのような生物でどのような病気を引き起こすか、また生理病とはなにか?そういったことを説明しながら授業は進みます。学生たちは懸命に理解を進めながら、それらキーワードを埋めていきます。
線虫は地球上のバイオマスの15%を占めると考えられていて、絶対寄生者であるゆえ宿主植物がなければ死滅する。また、生理病は非伝染性の病気の総称で、貯蔵中や輸送中に発病することもあるためよく発生して食品会社や飼料会社に勤めているOBから必ず年に数回問い合わせがある、などが興味深い知識として印象に残りました。
レジュメ解説の後、これまでの植物病理学の授業において、質問や感想を用紙に書いて提出する時間が設けられました。(取材回はちょうど中間あたりの回でした)
最後は授業時間の許す限り、質問をピックアップして教授が回答。
Q:窒素過多が病原体の感染や生理病を引き起こすと学びましたが、窒素が多すぎると植物はなぜ軟弱になるのか?
A:窒素を多く取ると可溶性のタンパク質が増えてしまいます。タンパク質は形を構成しているものですが、そこに余分なタンパク質ができることでバランスが崩れ必要なものまで排出され軟弱になってしまいます。
など、授業で触れた内容についての質問や、また試験に向けた要点を掴むための質問も多くありました。ひとつひとつの理解と、フィードバックを大切にする姿勢がその時間から伺えました。
【取材日:2017年11月29日】 ※所属・学年は取材当時