総合リハビリテーション学類の作業療法学専攻、内藤研究室の4年生、山中択真さん、堀川陽一郎さんの2人が進める研究を取材してきました。
2人は春から病院で働きながら、大学院にも進み研究を続ける社会人大学院生になります。働きながら研究を続けていくことを決めた2人の研究とこれまでのこと、これからのことをお聞きしました。
指導教員の内藤泰男先生は高次脳機能障害の研究をされています。これは人の認知と脳機能の関連性を明らかにする研究で、内藤先生は人の認知と動作や行為の関連まで広く研究をされています。
内藤先生の指導のもと、2人は手のメンタルローテーション課題時における視覚刺激を受けた際の脳内の処理過程を明らかにするということを研究のテーマにしています。
この研究に取り組むきっかけは、リハビリ職のセラピストとして実習を重ねていく中で、食事の動作など患者さんに動作指導を行う際に感じ始めた「もっと分かりやすく患者さんに指導できる方法はないか」ということでした。そこで指導時の手の提示方法(角度や形状)に着目し、患者さんにとって、より分かりやすい手の提示方向があるのではないか、いや、あるはずだと仮定したことに始まります。
実験は、研究室内の蛍光灯などの影響を避けるために設けられた銅の金網で覆われた小部屋の中で行われます。左右の手の同じ画像を様々な角度に回転させたものをモニターで患者さんに見てもらいます。あらかじめ決められた条件にあった画像でスイッチを押してもらいます。その際に生ずる脳波を測定し処理能力の速度や特徴、測定時にどこを見ているのかを測定する視線解析を行っていきます。
Q: 卒業してから社会人と大学院生の二足のわらじを履くわけですが、これからの自分像を教えてください。
【堀川】
病院で働きながら臨床の場で作業療法士としての経験値を増やして、より多くの知識が蓄積できれば、いつかは教える側に立ってみたいなとも思っています。
【山中】
実習などで思うことは、患者さんが一番求めることを出来ることがベストなのですが、同じことを学んできているはずなのに、人によって答えが違うことがよくあります。研究を並行することで根拠や論理的にとらえる力を身につけて、他の人の意見と自分の意見とを踏まえた上で、自分の判断や行動に自信を持てるようになりたいと思っています。
Q: 理学療法と作業療法の違いは何ですか。
【山中】
なんでも出来るし、出来なければならない、人らしく暮らすための手助けを出来るのが作業療法士だと思います。
【堀川】
受験までは理学療法士を目指していたのですが、受験の過程で作業療法士の存在を知り、機能面だけでなく、生活面まで見られることに魅力を感じました。
その代わり色々な知識を身につける必要があると実感しています。
卒業生は病院に勤務する身体障害領域の作業療法士が最も多いですね、また府大の特徴として地域で作業療法を実践する企業や、特例子会社で障がい者の方の特性を判断し、個々に適した部署に配置するようなテクニカルな人事の仕事をしている卒業生もいます。
一般の人から見ると作業療法士も理学療法士も同じように思われているかもしれません。我々作業療法士は、病院等施設でのリハビリの後のことを考えています。その人の生活の中でどのような体の動作が役に立つのかを考え、研究し取り組んでいます。
Q: 作業療法士を目指す学生へメッセージをお願いします。
【内藤】人に興味のある人に学んで欲しいです。例えば同じものを見ていても人によって捉え方が違います。人の感じ方の違いを認識することがとても大切です。そのことに面白みを感じる人に学んで欲しいですね。それと感じ方の違いや、パターンを分析的に見ることに興味のある人に来て欲しいです。
【山中】こころの温かい人が多いと実感しています。もし自分が患者側に立ったときに、こういう人にリハビリして欲しいと思える人がいる場所です。
【堀川】人とのコミュニケーションが大切になる職業だと思います。そのためか学内でも同級生はもちろん、先輩後輩の仲がとても良く、先生との距離も近いので確実に力を身につけることが出来ると思います。
【取材日:2018年1月11日】 ※所属は取材当時。