高橋 友基(たかはし ゆうき) さん
工学研究科 電子・数物系専攻 電子物理工学分野 博士前期課程 2年
2020年度入学/京都府立福知山高等学校 出身

国際会議とは、各国の研究者が一堂に会して成果について発表し、議論するための会議です。学術雑誌(NatureやScienceなど)とともに、学術会議は研究者間での情報交換を行うための重要な媒体となっています。

学術会議の講演は、ステータスの高い順から、基調講演、招待講演、そして一般講演があります。基調講演とは、学会の目的や基本的な方針を明らかにするための講演です。招待講演は、運営委員会で決めたテーマ・トピックについて活躍中の講演者を招待して実施する講演のことです。一般講演とは、研究者が論文を投稿して採択されて行う通常の講演です。多くの場合、招待講演は大学の先生方が行うため、学生が学会から招待されるというケースは非常に珍しいことです。今回、修士学生のうちに招待講演という快挙を遂げた高橋友基さんにお話を伺いました。

高橋さん【プロフィール】
氏名:高橋 友基(たかはし ゆうき)
所属:工学研究科 電子・数物系専攻 電子物理工学分野 博士前期課程 2年
出身校:京都府立福知山高等学校
趣味:登山、カフェ巡り

 

―高校生時代はどのように過ごしていましたか?

高校生の時は、良い意味で自由に過ごさせていただきました。遊ぶときはとことん遊び、テスト前には必死に勉強する、メリハリのある生活をしていたと思います。

また、高校時代は写真部に所属し、様々な部活の遠征について行ったりして多くの生徒と交流していました。この写真部にいた経験から“光”について興味を持ち、将来的には物理の先生になりたいと思っていました。

―なぜ府大を受験したのですか?電気電子系学類を選んだ理由は?

高校時代の経験から、(1)光に関する研究に力を入れている、(2)教職課程があり理科の教員免許を取得することができる大学・学部をめざし、前期日程では大阪大学の基礎工学部を受け、中期日程で大阪府立大学の工学域 電気電子系学類を受験しました。

欲張りな性格でしたので、遊びも勉強も全部やりきるぞ!と意気込んで大学に入学しました。(学部卒業時に、中学校・高等学校教諭一種免許状(理科)を無事取得することができました。)

大学4年生のときにカンボジアで小学校の先生のボランティアをされたそうです。

―研究室での1日のスケジュールや先生方の印象を教えてください。

当研究室ではコアタイムがないため、比較的自由に1日のスケジュールを立てて研究生活を送っています。もちろん、時期によってもだいぶ異なりますが、私の場合、午前中は自宅でTOEICなどの勉強をして、お昼から研究室へ。午後は研究をするといったルーティンを行っています。

また、担当教員の高橋 和 准教授は非常に“若い”先生で、研究議論や実験指導だけでなく、学生の輪に入って雑談するなど、学生と非常に近い距離間で接してくださります。コロナ禍以前では、研究室でたこ焼きパーティや手巻き寿司の会などを率先して開催されていました。

大学院生のある一日

休日はよく友人と登山をされるそうです。

―研究室ではどのような研究を行っていますか?

研究室ではシリコンを用いたレーザに関する研究を行っています。その中でも私は、当研究室で開発したシリコンラマンレーザの新たな応用先として静電気検知に着目し、デバイスの静電気応答について調査しています。(> 参考文献

―学生が国際会議で招待講演することは大変だったと思いますが、何かエピソードがあれば教えてください。

アメリカ光学会(OSA)から招待していただき、2021年8月9日から5日間開催されたNonlinear Optics Topical Meeting(NLO)にて、研究発表させていただきました。多くの方に発表を聞いていただくということで、如何に上手く自分の研究を聴講者に伝えられるかという点でとても苦労しました。国内会議で異なる分野の方に研究内容を日本語で説明するだけでも難しいのですが、今回は英語でネイティブの方相手に30分間の講演をするということで、その難易度の高さに圧倒されました。

ですが、高橋和准教授のご指導のもと、英語の微妙なニュアンスに気をつけながら発表の準備を進めていき、無事講演を終えることができました。

―今後の目標や将来の夢は?

大学院での研究活動を通じて、教師や研究員などといったスペシャリストだけでなく、幅広い視野で異なる分野をつなぐゼネラリストに魅力を感じるようになりました。大学院修了後は、関西のまちづくりを行う会社で様々な分野に精通した技術者になっていきたいです。
また、現在の研究が就職先の仕事にダイレクトにつながることは難しいかもしれませんが、研究活動を通じて身につけた“アイデアを形にしていく姿勢”は将来必ず役に立つと確信しています。

―最後に工学部を志望する中高生に向けてエールをお願いします。

工学部に限った話ではありませんが、自分自身の“やってみたい!”という気持ちを大事に、新しいステージに挑戦してください。中学・高校とは異なり大学では、各学部で専門性を身につけるために、ひとつの分野に特化して勉強することが多いです。親や先生ではなく、自分で将来学びたい分野を選び取ることはとても難しいですが、この経験が自分の人生において大きな糧になると思うので精一杯頑張ってください!

参考文献
[1] Y. Takahashi, et al., “A micrometre-scale Raman silicon laser with a microwatt threshold,” Nature 498(7455), 470-474 (2013).
[2] S. Yasuda, et al., “Detection of negatively ionized air by using a Raman silicon nanocavity laser,” Opt. Express 29(11), 16228‒16240 (2021).
[3] 高橋友基、保田賢志、高橋和 ”シリコンフォトニクスを用いた静電気検知―宇宙産業における事故の防止に向けて―” 「クリーンテクノロジー 2021年7月号」vol.31(7) pp.23-27 (2021)

【寄稿日:2021年8月20日】※所属は寄稿当時