2016年10月15日、校友会(大阪府立大学全学同窓会)が主催する、卒業生と在学生が夢を語り合う世代間交流会「夢こもんず」が行われました。
この日のOB側ゲストスピーカーは工学部 数理工学科 卒業でクックビズ株式会社 代表取締役の藪ノ 賢次さん。
府大を卒業生してすぐに当時の府大生としては珍しい「起業」という道を選択し、奮闘してきた12年間を語っていただきました。
貴重なお話が伺えるこの機会、現役の学生やクックビズの若手メンバーも参加するなか、「夢を実現する、アントレプレナーという生き方」をテーマに、色々とお話いただきました。
<OBプロフィール>
藪ノ 賢次(やぶの けんじ)
クックビズ株式会社 代表取締役
大阪府立大学 工学部 数理工学科 卒業(2004年)
【経 歴】
1980年 和歌山県日高郡生まれ
1999年 大阪府立三国丘高等学校卒業
2004年 大阪府立大学工学部卒業後、翌年友人と通信端末の販売会社を起業。2007年 社内事業だったクックビズ事業を別会社として独立。代表取締役社長就任
●クックビズの始まり
大学を卒業してからどんな仕事を始めようかと模索していたころに、新たな通信端末としてサービス開始されていたウィルコムに出会いました。将来性に魅力を感じ、このサービスの販売に関わりたいと考え、直接会社に連絡を取り担当者に会わせてもらいました。
個人には代理店権利を与えることができないと言われ、そこで法人を立ち上げることになりました。事業スタート当初は販路を個人に設定して展開していましたが、そのうち法人向けに販路を拡大し、つながりを拡げていくうちにレコールバンタンという食の専門学校に出会いました。販売を通じて担当者と懇意になり、色々な話をしていくうちに「何か面白いことを一緒にやりませんか」という話になり、企画を提案することになりました。それがクックビズ事業の始まりです。
●クックビズとは
専門学校在学中のアルバイト先を学校が紹介する、というサービスが最初のクックビズ事業でした。アルバイトを要すると思われる、地方から進学する専門学校生(全学生の3~4割)にターゲットを絞り、専門学校タイアップの在学中アルバイトサポートサービスを展開しました。ここから発展して、今では飲食業界に特化する人材サービスへと進化しています。
●なぜクックビズのサービスを作ろうと思ったのか
自分の反省として、学生時代に将来の職業観がリアルにイメージできる機会があれば、もっと勉強に身が入ったのではないかという思いがありました。将来の目標を決めてそこに居ると思っていた専門学校生も、ヒアリングしてみると以前の自分と同じように将来の職業に迷いや悩みを持っていることが分かってきました。その悩みを少しでも小さくしてあげたいという想いから、リアルな「仕事の場」に多くの専門学校生を連れ出そうというコンセプトで提案しました。
そうしているうちに離職率が非常に高い飲食業界の現状を解決しなければならないと考えるようになり、アルバイト中心から正社員中心にピボット(※)したことで、企業として加速しました。
※ビジネスにおいて事業の「方向転換」「路線変更」を意味する。
●私にとって「アントレプレナー」とは
アントプレナーという言葉自体は、「起業家」「自ら事業を起す者」という意で、経済革新につながるイノベーションの担い手を差します。私自身の見解としては、世の中の課題に対して何かしらのアプローチをして解決していく存在すべてがアントレプレナーだと思っています。
クックビズであれば、採用に対するインフラがまだまだ整っていない飲食業界に広くアプローチして、企業側にも採用方法の見直しをコンサルティングし、また転職者側のコンサルティングも行います。そうすることで両者の距離を縮める活動をしています。十分な情報を得て、自分の判断で納得度の高い転職ができる、「離職率の低い転職」を世の中に斡旋している気概で事業を続けています。
●「夢を実現する」とは
夢は変わっていくと思います。私も起業して結婚して子供ができて、自分の夢はどんどん公的なもの、つまり「世の中的なもの」に変わってきました。今はいくつかのテーマを持って世の中を見ています。例えば「関西」というテーマであれば、元気のあるベンチャー企業として関西を元気づけるロールモデルになりたいという夢があります。また、例えば「食」というテーマであれば、日本の国力となりうるコンテンツである「食」を通じて世界を幸せにしたいという夢もあります。
個人的には次々に企業を立ち上げていく連続起業家、「シリアルアントレプレナー」になりたいという夢を持っています。メガベンチャーを関西に一つでも多く作って経済を活性化させたいと考えています。
課題が多そうな世界、解決すればみんなが幸せになりそうな世界にはその分チャンスが溢れていると思います。そういったことにひとつひとつ挑戦して、私自身も人生を楽しみたいと思っています。
●アントレプレナーになる資質とは
起業してから結果の出なかった5年間は「自分はアントレプレナーに向いていない」と思っていましたが、今では非常に向いている職業だと思っています。人間の先入観とは、それだけ変えていけるもので、それだけ曖昧なものだなと実感しています。ですのでマインドはとても大切。
また起業してビジネスをやっていく上で、「いろいろな人に応援されること」はとても大切だと思います。味方が多くても、それと同じくらい敵がいては前に進めないし、めちゃくちゃ好かれるかわりに、めちゃくちゃ嫌われるというような極端な人でもいけない。それに関して言えば、「アンチ」の生まれにくい大阪府立大学というポジションの大学と、そのOB・OGには大きなアドバンテージがあると思います。
< 講演会を振り返って/現代システム科学域マネジメント学類 右大輝 >
私が今まで見聞きしてきた起業家の方は、何か問題を解決するために起業された方がほとんどでした。なので私は、起業というものは、何か社会的な目的があって、それを達成するためのものだと勝手に思い込んでいました。
今回お話を聞かせていただいた、藪ノさんは起業を生きていくうえでの手段として用いられており、藪ノさんのような起業家には初めてお会いしました。私が見てきた世界がまだまだちっぽけなものだったと改めて気付かされた瞬間でした。
府大生はとても恵まれていて、普通なら会えないような人(企業の社長さんなど)と会える機会を大学が用意してくれます。せっかく府大にいるのなら、それをフルに活かして色々な人に会いに行かないと損だと思いますよ!笑
【取材:夢こもんず参加メンバー】
【取材日:2016年10月15日】