2017年2月10日(金)I-siteなんばにある「まちライブラリー@大阪府立大学」で第32回アカデミックカフェが開催されました。カタリストは地域連携研究機構 生涯教育センター長の山本章雄教授。

「スポーツのチカラ」をテーマに、2回にわたってお話いただきます。

「お・も・て・な・し」で開催が華々しく決定した「2020年東京オリンピック・パラリンピック」、その後はエンブレム問題、競技場問題などで世間を騒がせています。そうした中「レガシー(遺産)」という言葉がたびたび登場し、スポーツイベントは一過性のお祭りではなく、未来への出発点であることが強調されています。しかし、一体何を未来に残すのか、という核心部分の議論は明確ではないかもしれません。今回は「オリンピック・レガシー」をテーマに、過去のオリンピックを振り返り、日本のスポーツにとって必要なレガシーとは何かを、先生のお話を通じて考えました。

現在行われている近代オリンピックは、古代オリンピックが模範です。B.C.776年~A.D393年の間に古代オリンピックは293回開催されました。この時代は近隣国同士が戦争状態にありましたが、大会開催前後の3ヵ月間は休戦しました。このような事実をふまえると、古代オリンピックのレガシーは「平和」であると言えます。

再びオリンピックが開催されたのは1896年。近代オリンピックの幕開けです。驚くのが第5回から15回まで「スポーツ・芸術」という競技があったこと! 建築、絵画、文学、彫刻、音楽の分野で競われていたそうです。これは近代オリンピックの「スポーツ、文化・教育の融合」という理念に基づいています。

では過去のオリンピックには、どんなレガシーがあったのか? 1964年に開催された東京オリンピックでは、鉄道・高速道路の充実、テレビの衛星中継開始、大型ホテルの開業など、大会開催を契機に社会インフラが一新。またスポーツ活動においては、地域での少年クラブチームの設立が挙げられます。現在のスポーツの基盤を支えているこのレガシーは、現代の日本にとって大きいと言えます。

また第30回ロンドンオリンピックでのレガシーは、スポーツ・文化・教育の融合という理念を反映した「文化プログラムの義務化」。スポーツの能力に限らず、誰もが自分の事としてオリンピックに参加して欲しいという想いと共に、あらゆる人々の繋がりから新たな活動を創造するという狙いもありました。

日本ではメディアでの発信や地域での競技開催など「みるスポーツ」が盛り上がっています。スポーツ庁の誕生や、スポーツによる経済の活性化、スポーツ権の制定、国民への健康づくり推進など、社会におけるスポーツの存在が大きくなっています。

その上で、2020年の東京オリンピック開催。単なるビッグイベントで終わらせるのではなく、どんなレガシーを次の世代につなげられるか。素晴らしい競技場を作ることや金メダルが増えることだけがレガシーではないと先生はお話くださって、今回のお話は終わりました。皆さんはどうお考えになりますか?

【取材日:2017年2月10日】※所属は取材当時