今回取材したのは主に羽曳野キャンパスで活動をしている、大阪府立大学ボッチャ部(以下、ボッチャ部)です!
皆さんはボッチャというスポーツをご存知ですか?
ボッチャは、障がい者スポーツのひとつで、脳性麻痺などにより運動能力に障がいがある競技者向けにヨーロッパで考案されたスポーツです。
ボールを使った競技で、障害の有無に関わらず老若男女楽しめ、2020年に東京オリンピック・パラリンピックが開催されるということもあり、近年少しずつ盛り上がってきています。
今回はそんなボッチャのまだまだ知られていない面白さや魅力を、ボッチャ部の村上隼さん(地域保健学域 総合リハビリテーション学類 理学療法学専攻2年)にお伺いしました。
―ボッチャとは、どのような競技なのですか?
障がい者スポーツの競技、パラリンピックの種目のひとつとして、重度障がい者、障害の程度が重い方々に向けてヨーロッパで考案されたものです。
ボールを使った競技で、青と赤チームに分かれてボールを投げたり転がしたりして、的となる白いボールに近づけていきます。最近でいうと、カーリングのルールにプラスして、的自体も動いたりしてっていう感じですね。
カーリングはストーンと呼ばれる石を、床に描かれた円の中心に近づけることで得点を競いますが、ボッチャは円の代わりに白のボールを的として使います。
最初に的となる白いボールを選手が投げて位置を決められること、さらに他のボールがぶつかることで的自体が動くところは、カーリングとは異なります。
―ボッチャ部はどのような活動をしていますか
自分たちが強くなるための練習を行うだけでなく、外部から依頼されて試合の審判をしたり、地域のボッチャ体験会に参加させてもらい、ボッチャの普及活動をしています。
練習は不定期ですが、放課後や授業で使用していない時間の体育館で行っています。
また、各自がそれぞれの分野で頑張るというのが多いです。
僕の場合は選手としてボッチャが強くなりたいという意思を持って入ったのですが、部員の中には活動をしているうちに選手のサポートがしたい、ボッチャの活動を広めていきたいというように考え方が変わる人もいます。
例えば、サポートしたいという意思が強い人は空き時間に舞洲、府大などで行われている外部のボッチャの選手や、強化指定選手たちが集まって行うトレーニングのお手伝いをしたりしています。
―トレーニングというのはどのようなものですか?
ボッチャは脳性麻痺の方が中心のスポーツなので、皆さんが体育会系の部活動と聞いて想像されるようなハードな筋トレとは違い、ゆっくり心拍数を上げて、しっかり体を動かしていくことや、遠投の練習などを行っています。
これまでは寝返りをするのも厳しかったり、ずっと車いすに乗られていたりする脳性麻痺の方にとって、筋トレがタブー視されていたところもあったのですが、最近は研究も進んでおり、「いや、動かしたらいいじゃない、しっかりトレーニングしたら強くなるんじゃないか。」という考えのもと、トレーニングも行われています。
―ボッチャの魅力を教えてください
一見簡単そうに見えるので、僕自身最初のイメージは白いボールに向かってボールを投げて近づけるだけ、「正直簡単やろ。」と思ってやってみたら全然近づけなくてびっくりしました。
そこで脳性麻痺の選手の上手なプレイを見ると、「なんでちゃんとピタッとなんねん。なんでこんなに上手いねん。」と思いました。
選手から話を聞いたり、実際にボッチャの練習をしたりするうちに、一球一球のボールの狙う場所などの工夫がすごく、最初に思っていたイメージと違い、頭脳戦でした。自分の考えた通りにバシッと決まった時は快感です。
作戦を考えるのが本当に楽しくて、どんどんのめり込んでいきました。
僕らも障がい者の方と一緒に試合へ出させてもらうことが何度かあったのですが、ボッチャは障害の有無にかかわらず誰もが楽しめてのめり込めて、小さな子どもからお年寄りまで出来るというスポーツです。
体に負荷が全然かからないので、誰にでも楽しめるスポーツというのが魅力だと感じています。
―逆に難しいと感じるところはありますか
もともと、障がい者の方と触れ合っていたわけではなかったので、はじめて重度の障がいを持った方に会ったときは、僕自身ビビりました。部員の中には、障がいのある方とコミュニケーションが取りにくいと感じている人もいます。
また試合などで障がいを持った方から「あ、結局、健常者が勝つのか」とという声が聞こえてくることがあります。パラリンピックスポーツで、健常者が勝つのはおかしいのではないか、と思う方もまだいるようで、そのあたりは難しいなと思います。
ボッチャという大会のなかで障害の有無に関わらず、皆で楽しめるような関係になりたいと思っています。
障がいの有無にとらわれないで、お互いリスペクトし合いながらスポーツをしたいですね。
―障がいの有無によって投げ方などに差異はありますか
そうですね、障がいのある方は投げ方に制限がでてきます。
例えば、握力や筋力によって、上から、下からと投げるスタイルが変わります。
逆に、狙う場所などは共通しているので、試合になると障がいの有無はほとんど関係ありません。そのため、自分たちは選手のストレッチやトレーニングなどの難しい部分を積極的にサポートしています。お互い強くなって、負けてられるかと思うくらいに高め合える関係になりたいなと思います。
―障がい者の方との間に感じてしまう壁をどうすれば乗り越えられると思いますか
僕も最初は壁を感じていましたが、「慣れ」によって壁はなくなるものだと思います。
最初から壁を感じないで接することはなかなかできないと思います。
知らないことを不安に感じたり、疑問に思ったりすることは、差別ではなくただの感情であって、それは普通の反応だと思います。
壁を乗り越えるには普段障がいのある方と接する機会のある人からの助言なども参考にするといいかもしれません。
僕自身も、実際、壁というものは全然ないということを伝えていけたらいいなと思います。
スポーツを通じても壁は感じなくなります。
―これからの目標はありますか
11月に学生で行われる第二回ボッチャ大学選手権大会が府大で行われるのですが、そこで勝ちたいです。
ここで勝てば3月に東京で行われる、日本代表や企業の団体も参加する大会であるボッチャ東京カップ2019に大学生として出られます。
今年は大会で勝つために技術を磨いていきたいです。
また、障害の有無にかかわらず老若男女関係なくボッチャを知ってもらって、楽しんでもらうことがいいのではないかと思っています。
野球やサッカーと同じように“ボッチャ”と聞けば、「知っているよ」となるのが望ましいし、今はハードルが高いですが、そうなれる競技だと思います。それがいつになるか分かりませんが、ボッチャ全体の目標です。
―Tシャツに書かれている言葉にはどのような意味があるのですか
これは「普通が変わる普通を変えろ」という、顧問である奥田邦晴先生の理念です。
健常者と障がいのある方との間には、今でも完全に平等であるとは言い難い「普通」ができてしまっています。その「普通」をボッチャでは変えられると思います。
僕らも障がいのある方々に試合で負けますし、障害の有無にかかわらずみんなが平等に戦えます。「普通を打破したい」そういう意味を込めて奥田先生がこのTシャツを作ってくれたので、その言葉を意識してやっていきたいです。
―最後に、読んでくれた方にメッセージをお願いします
ボッチャはまだあまり知られていないし、マイナースポーツではあると思います。
でも、ボッチャを見たり自分でもやってみたりすることで、“楽しいと感じてくれる”という自信はすごくあります。まずボッチャという言葉を知ってもらって、そこから興味を持ってもらえたらうれしいです。
将来、温泉の後にみんなで出来る定番スポーツとして、卓球ではなくボッチャが当たり前になればいいなと思っています。
日本ボッチャ協会の代表理事が地域保健学域長ということもあり、府大はボッチャを発信していこうという大学でもあるので、一緒に活動してみたいという方は声をかけてください! 僕たちももっと発信して、もっとボッチャを広めていきたいと思っています。
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―取材を終えて―
キラキラした表情で取材に応じてくれたのが印象的で、ボッチャへの愛や熱意を感じました。今後ボッチャの魅力がもっと多くの方に伝わって、国民的なスポーツになるといいなと思います。村上さん、大阪府立大学ボッチャ部の皆さん、ありがとうございました!
【取材日:2018年8月6日】
【取材:國廣美桜 MICHITAKERs 現代システム科学域 知識情報システム学類3年
崎山琴音 MICHITAKERs現代システム科学域 知識情報システム学類3年
森岡りな MICHITAKERs工学域 物質化学系学類2年】
※所属は取材当時