2020年1月15日(水)、総合リハビリテーション学研究科の奥田邦晴教授が、出張・アカデミックカフェとして和歌山大学の地域向け講座「わだい波切サロン」で講演を行いました。
この講演は、大阪府立大学と和歌山大学で締結した包括連携協定(2017)に基づいた「和歌山大学・大阪府立大学連携特別講座」として実施したものです。
テーマは「百聞は一投にしかず~パラスポーツ・ボッチャ~」。ボッチャは、車いすバスケットボールやパラトライアスロンなどと違い、イメージが浮かびにくい競技ではないでしょうか。
今回、日本ボッチャ協会代表理事でもあり、パラリンピックの正式競技「ボッチャ」の普及に努めている奥田先生より、「ボッチャ」の解説やパラスポーツの意義についてお話いただきました。
―ボッチャとは
赤・青2チームに分かれ、はじめに投げたジャックボール(目標球)に、チームカラーのボールをどれだけ近づけられるかを競うターゲットスポーツです。
チームカラーのボールをジャックボールに近づけるだけではなく、相手のボールやジャックボール自体に当てるなど、高度な戦略が求められます。このような点は、ボッチャは少しカーリングに似ています。
ボッチャ最大の特徴は重度障がい者スポーツ選手のみがエントリーできる競技である、ということです。実際にパラリンピックに出場する選手の皆さんには、脳性麻痺や筋ジストロフィー、高位頸髄損傷などの重い障がいがあります。
選手によって障がいの度合いやタイプが異なるため、ボールを投げられない選手の中には足の指先で押す、介助者と参加して口や頭に取り付けた補助器具で角度をつけた台(ランプ)の上からボールを押すなど、様々な方法で競技に参加します。
また、選手が使うボールは規程内でのマイボール制です。もちろん、補助器具も選手によって全て違います。
―ボッチャを通じて気付いてもらいたいこと
重度障がいがある本人や周囲の方は、やってもらって、やってあげて当たり前という環境にどうしてもなってしまいがちです。奥田先生はそうではなく、特に障がい者のリハビリとは「自らの人生を変革していくための手段」だと言います。
皆ができなくて当たり前、できないと思い込んでいても、リハビリを通してできるようになることはたくさんあります。歩けないと思っていたけれど、補助具を使えば歩けたり、電動ではなく、手動車いすを動かしたり。
本人や両親をはじめ、「できないと思い込んでいる」意識の壁を壊すことが一番大変とのことです。
また、障がい者スポーツは自立生活支援の一手段とも言えます。
スポーツそのものを楽しむことは、「(重度)障がいがあっても世界で活躍できる」といった自信や自己決定、自己責任にも繋がり、「人の可能性」を社会に発信することでもあります。
スポーツをしている時に選手は、患者や障がい者ではなくアスリートなのです。
―参加者がボッチャを体験
教室後方には正規のサイズよりも少し小さなボッチャコートが出現。はじめは恐る恐る投げていた参加者の方々も、1ゲームやって理解したあとには白熱の大接戦が繰り広げられました。
奥田先生は、全国の支援学校にボッチャを広めて競技人口を増やす活動を行っています。全国の支援学校が参加する「ボッチャ甲子園」では、北海道と沖縄の支援学校の生徒が対面するという、歴史的な場面もありました。
年齢や障がいに関係なく、誰もが楽しむことのできるボッチャ。ボッチャがどこでも誰でも誰とでも楽しめるようになれば、できないと思い込んでいる「普通」が変わり、「普通」を変えることに繋がるのではないでしょうか。
「ボッチャ」を知ることで、東京2020パラリンピックの楽しみがまたひとつ増えた一日となりました。
◆参考情報
話題のテーマを和大・府大の公開講座で今年も相互開催―パラスポーツ“ボッチャ”そして“万葉集”―(2019年12月13日 プレスリリース)