井口 宏紀(いぐち こうき)さん
生命環境科学研究科 応用生命科学専攻 植物生体防御学グループ
2017年3月 私立近畿大学附属高等学校 卒業
2021年3月 生命環境科学域 応用生命科学類 卒業
2021年4月 生命環境科学研究科 応用生命科学専攻 博士前期課程 入学

―応用生命科学類を目指した理由

高校時代、私は物理が好きで工学部や建築学部に進もうと考えていましたが、同級生の多くが工学部を目指していたため、周りとは何か違うことをしたいといった安易な考えが農学系の学部を志望したきっかけです。

 

応用生命科学類の魅力の1つは、植物や動物だけでなく微生物やウイルスまで、さらに分子・細胞などミクロな領域から栽培・環境などマクロな領域まで、他にもバイオにかかわる様々な分野を学び研究に携われる、選択肢の多さだと思います。私は高校で生物を習っていなかったので詳しいことは全然わからず、入学後も特にやりたいことはありませんでした。そのため面白そうだなと思った方にどんどん進んでいったので、幅広い選択肢があったのは非常に良かったと感じています。

 

―研究内容と研究室の様子

私が所属する植物生体防御学グループ(大阪公立大学では植物病理学研究グループ)は植物の病気の防除を最終的な目的としており、特に土壌伝染性糸状菌と植物ウイルスによる病気について研究しています。私は植物ウイルスの発病メカニズムに関わる現象の解明に取り組んでいます。植物ウイルスに感染した作物は成長抑制や変色が起こり、経済的価値が著しく下がります。しかし、詳細な発病のメカニズムは不明のままであり、そのため有効な農薬も存在しません。

左:健康な植物、右:ウイルスに感染した植物

植物の細胞には緑色のもととなる葉緑体があり、光合成はもちろん、植物の防御反応や様々な代謝を行う重要な器官です。植物ウイルスはこの葉緑体を標的とすることが知られており、それによって宿主植物やウイルス自体にどのような影響を及ぼすのかということを調査しています。私たちの研究の最終的な目標は発病メカニズムを解明し、ウイルス病から農作物を守ることであると考えています。

当研究室では在室しなければならない時間は決められていないので、自ら計画的に実験を進めることができます。私たちの実験は植物の育成や大腸菌など微生物の培養を伴うので、それらを考慮してスケジュールを立てる必要があります。また、現在はオンラインで全員参加のミーティングを行っており、各自研究の進捗報告や最新の論文などについて議論しています。先輩後輩といった関係はあまりなく、普段から実験についての相談や質問など全員が同じ立場で気軽に議論し合い、わからない事は教え合える雰囲気だと思います。

―農学部を志望する中高生に向けてのエール

大学受験は決してゴールではなく一つの通過点です。おそらく受験する際に多数の大学・学部の選択肢を前に悩まれていると思います。しかしこのような選択は大学に入っても、就職活動をしても何度も直面することになります。まずは肩の力を抜いて、その中で自分が今最も良いと思う方を選んでみてください。結果はその後、どのように行動するかによって決まると思います。本大学は皆さんにとって魅力的な選択肢をたくさん提示できる大学だと思います。もしその中で農学部を選んでいただけたらとても嬉しいです。

 

【寄稿:2021年10月29日】※所属は寄稿当時。

大阪公立大学 農学部