2019年11月13日・校友会主催「夢こもんず」が開催されました。
大学生になったらいろんなことにチャレンジしたい。初めて大学の門をくぐったとき、こんな思いでワクワクした人は多いはず。「夢こもんず」は、そんな“ワクワク”にあふれた学生を支援する校友会事業。社会で活躍している若手の卒業生がスピーカーとして登壇します。そして、今回の「夢こもんず」の企画、運営を担当したのは学生団体「clopen(クロープン)」です。
「clopen」を立ち上げたのは、3年生の前田 恭輔さんと崎山 琴音さんの二人。「『キャンパスを、学生同士が自然につながって、前向きな話ができる場所にしたい』と、clopenを立ち上げました」と前田さん。当初は、前田さんと崎山さんが代表でしたが、現在は、1年生の西岡 悠生さんが代表を務めます。西岡さんは「今回の「夢こもんず」には約30名の人が参加してくれます。これを機に何か新しいことが始まったら嬉しいと考えています」と語ります。
今回のスピーカーは、2011年、大阪府立大学大学院工学研究科を修了後、約7年間パナソニックに勤務し、2019年7月、アマゾンジャパンに転職した髙橋 敦さん。「毎日がDay1!チャレンジし続けることで成長する」と題して、成長するための考え方や行動の仕方を、ご自身の経験をもとに伝えてくださいます。また、髙橋さんは、大学在学中に2年間のフランス留学を、パナソニック勤務時代には2年間アメリカに駐在、パナソニック退社後、シンガポールの南洋理工大学に留学し、MBA(経営学修士)を取得するなど、海外留学と海外勤務を経験されています。そのため今回のOB講演会には、留学や海外勤務に興味を持つ学生が多数、参加しています。
時計が18時を指しました。開場の時間になり、clopenのメンバーは、受付や誘導など、それぞれの持ち場に着きます。友達と連れだってやって来る人、一人で来る人などさまざまですが、その表情は期待感で輝いています。
clopenのメンバーの司会により、講演会のオープニングが始まりました。オープニングは、事前に配られたワークシートをもとに参加者同士による自己紹介です。ワークシートには名前などの項目に加えて「もし、日本に住めなくなったらどこに行く?」といった質問もあります。参加者たちが、どこに住むのかを語り合い始めると、会場は一気に賑やかになり、このひとときがアイスブレイキングであることがわかります。司会者が「髙橋さんは、どこに住みたいですか?」と質問を投げ、講演への流れをつくり出します。髙橋さんは「ニューヨークですね。パナソニック時代に住んだことがあり、好きな街なので」と応え、「すごいなぁ」「カッコいいなぁ」と拍手が起こる中、講演会が始まりました。
壇上に立った髙橋さんは、講演会のタイトル「毎日がDay1」を映し出したモニターを指さして、「毎日がDay1って、知っていますか?これは、アマゾン創業者であるジェフ ベゾス氏の名言の一つで、Day1は常にスタートアップのように果敢に挑戦をする。Day2からは停滞してしまうから、常にDay1の気持ちで挑戦しようという意味が込められているんです」とタイトルの意味を解説。この考え方はパナソニックも同様で、創業者である松下幸之助氏は「日に新た」を提唱していたと語ります。
「私は、どちらの言葉も大好きです」と髙橋さん。その言葉通り、髙橋さんは常に「Day1」「日に新た」の気持ちで、さまざまなことに挑戦してこられました。例えば、工学部経営工学科2回生のときの挑戦は「英語を極める」こと。英会話教室に通いながら、アルバイトをして留学資金を蓄え、アメリカとニュージーランドへの短期語学留学を果たしました。努力の甲斐があり、3年生の頃には学科内で「英語のことは髙橋に聞け」という雰囲気ができたそうです。
次なる髙橋さんの挑戦は院生時代、フランスの情報系大学院EISTI(École Internationale des Sciences du Traitement de l’Information)への留学です。留学先はアメリカ、ドイツ、フランスの三か国がありましたが、「大学生活に慣れてきて停滞感を感じ、とにかく新しいことに挑戦したい」と、“最も生活するのに困難なイメージ”のあるフランスを選んだそうです。現地では想像以上にフランス語の壁に苦しんだことや就活の時期を留学先で迎え、就職浪人を覚悟したこともあったと挑戦に伴う苦労も語ります。
ここで気になるのが、就職浪人を覚悟しながらもパナソニックに就職を果たしたこと。髙橋さんは、諦めそうになる気持ちを奮い立たせて、フランスから日本の企業にアプローチし続けた結果、パナソニックともう1社から返答を受け取ったそうです。「パナソニックに決めたのは、グローバルチャレンジャーというリクルーティングテーマに共感したから。ただ、大阪出身だったことが大きい。え?そんなこと!?とビックリしているみたいだけど、入社してからやりたいことを見つけるぞという気持ちが大事。この考え方は、当時も今も変わりません」と髙橋さん。「行動するのは、やりたいことが見つかってから」という人も多いなか、「立ち止まって考えても何も始まらない。動きながら目標を探そう」と熱く語ります。
パナソニックに入社後、情報システム部門に配属された髙橋さんは、約2年間、海外トレーニー、プロジェクトマネージャーとしてパナソニックノースアメリカに駐在しました。帰国後は、システムエンジニアとして技術を磨くことに。ところがこの頃、髙橋さんは社内異動となりました。英語を極めること、フランス留学に続く、第3の挑戦です。
「経歴だけを見ると華々しいのですが、実は海外勤務時代は語学力が活かせず、帰国後は海外勤務経験が活かせないばかりか、同期との技術力の差を痛感しました。挫折の連続でした」と当時を振り返ります大学時代の学習経験が活かせる部署への異動が叶い、異動先ではデータ分析を手がけたそうです。髙橋さんは、その後、介護プロジェクトに参画することに。
「2025年、3人に1人が高齢者になります。介護プロジェクトは、そんな時代の社会貢献を目的に、事業を立ち上げる使命がありました。そこで、エアコンに人感センターを内蔵してWi-Fiでつなぎ、クラウドを介して遠隔で高齢者の状態を把握できるシステムを開発し、『みまもり安心サービス』という介護事業プロジェクトに参画しました。この事業がパナソニックのHPに掲載され、社会の役に立っていることを実感しました。また、このとき、事業拡大の難しさを痛感しつつ、当時のプロジェクトリーダーのリーダーシップ力に魅せられた思い出があります。そこで自分に不足していることが何かがわかりました。それは経営知識と真のリーダーシップです」。
このときに感じた不全感ともいうべき違和感が、髙橋さんを次なる挑戦へと誘います。次なる挑戦とはMBAの取得です。髙橋さんの新たな挑戦の場は、シンガポールの南洋理工大学 / NTU(Nanyang Technological University)。
「ここでは、経営、経済、マーケティング、リーダーシップなど、MBA取得に必要なことを学んだだけでなく、28ヵ国から90人の留学生が来ていたことから、文化の違う人たちと密接に付き合いました。端的にいうと喧嘩です(笑)。お陰で、ダイバーシティにおけるマネジメントを体験的に学べました。外国人と喧嘩するって、なかなかできないですから貴重な体験ですよね」。
MBA取得後、髙橋さんは2019年夏、アマゾンジャパンに転職します。
「配属先はファション事業部です。ここでeコマースを手がけているのですが、戦略企画が優れていて、推進スピードが速いなど、アマゾンには企業としての魅力がたくさんあります。また、アマゾンでも、ヘルスケア分野(特に興味がある介護分野)にも関われるので、近い将来、私の経験と実績で会社に貢献できると考えています」。
ここで髙橋さんは、まとめとして「学生時代から現在までの経歴は、挑戦を核にして、自分が完璧でないことを知り、足りないことを補う学びに取り組み、人の役に立つことで喜びや達成感を感じることで積み上げてきたもの。また、失敗の原因を振り返り、どうすれば良かったのかを考えて次の挑戦につなぎ、成長を実感して達成感をもつ。その中から、もっと良くするには?と考えて挑戦する」という髙橋流挑戦の流儀を紹介すると、参加者はメモを取ります。そして、マイクを握り直し、姿勢を正し「今日、私が一番、伝えたいことは、失敗を恐れないでほしいということです。失敗やトラブルこそ資産です。そこから目をそらせずに挑戦の種を探す。これが大切です。私の経歴は、決して華麗ではなく、失敗とトラブルの壁を乗り越えてきた変遷です。留学先では言葉と文化の壁に苦しみ、介護事業立ち上げ時もクライアントからのクレームの嵐を受け、改善するために必死で取り組みました。経歴を並べただけではわからない苦労や失敗を山ほど経験して、今の私があります」と髙橋さん。最後に「私にとって挑戦は、新しいことを経験すること。この精神で挑戦し続けます」と結び、会場には大きな拍手が巻き起こりました。
髙橋さんの講演終了後、clopenのメンバー主動で、髙橋さんへの質問コーナーや参加者同士のディスカッションタイムも行われました。質問コーナーでは「パナソニックに就職するにはどんな準備をすれば良いですか?」といった具体的な質問や「アルバイトだけで留学費用は賄えましたか?」といった質問が寄せられ、人生の先輩として親身に応える髙橋さんの姿が印象的でした。
ディスカッションタイムでは、学業の傍ら、フリーランスのSEとして活動している学生とWeb制作に興味を持っている学生との出会いがあり、一方では「一緒に何かできそう!」と意気投合するグループもあり、大盛況。講演会の準備や司会はもちろん、初対面でも打ち解けて話しやすい雰囲気をつくり、リードしているclopenメンバーの立ち居振る舞いも清々しく、素晴らしい「夢こもんず」となりました。
髙橋 敦さんプロフィール
2004年〜2008年 大阪府立大学工学部経営工学科
2008年〜2010年 フランス留学・EISTI(École Internationale des Sciences du Traitement de l’Information)ビジネスインテリジェンス専攻
2008年〜2011年 大阪府立大学工学研究科知能情報工学分野
2011年〜2018年 パナソニック株式会社
(2012年〜2014年 パナソニックノースアメリカ駐在)
2018年〜2019年 シンガポール留学・NTU(Nanyang Technological University)MBA取得
2019年〜 アマゾンジャパン ファション事業部シニアマネージャー
【取材日:2019年11月13日】※所属は取材当時