神奈川県藤沢市を魅力的にする南北軸のアイデアを課題とした、日本造園学会平成29年度全国大会の学生公開アイデアコンペ「藤沢の軸をデザインする-北から南に、南から北へ-」が2017年5月19日~21日に開催され、緑地計画学研究室の院生・学生が「陸の島」で最優秀賞を受賞しました。
▼緑地計画学の学生チームがアイデアコンペ「藤沢の軸をデザインする」で最優秀賞を受賞
http://www.osakafu-u.ac.jp/news/nws20170601_5/
今回、活気に沸く緑地計画学研究室にお邪魔し、メンバー代表の坂本幹生さん(博士前期課程2年)、井上陽水さん(博士前期課程2年)、盛岡諄平さん(博士前期課程1年)、飯田明希さん(学域4年)からお話を聞いてきました。
Q 今回のコンペは2月に企画をし始めてから2ヶ月で作成し、4月のコンペに応募されています。どのような過程を経て、完成までに至ったのでしょうか。
まず主となる軸をどういった方向性で進めるのか、最初のアイデアが出るまでがいちばん苦労をしました。チームから出てくる様々なアイデアを丁寧に見極めていきながら、新しい着眼点となる「陸の島」という発想が出たときは、これだ!と感じました。
水路を軸に、街道を軸になど、一般的に多くの人が思いつくアイデアではなく、藤沢の特徴的な地形に目を向けて新しい切り口のプランを模索していく、この点がコンペでも高く評価されたところだったようです。
この作品は机上での議論だけで出来上がったものではなく、グループ全員で現地へ赴き、フィールドワークも行いました。現場百遍といわれるように、やはり現地へ出かけて初めて見えてくるものもある。想定と現実の違いの気づきや、思いがけない資源の発見という過程を現場で踏むことで、提案のストーリーに現実味が生まれ、プレゼンテーションの説得力も増したのだと思います。
普段の研究テーマが違う学生が組んでいるチームということもあり、観点も様々。今回のテーマが決まってからも、ディスカッションの時間は重要と考えました。真剣な意見が飛び交う中で、上級生どうしで対立する場面もあり、ヒヤヒヤしながら下が見守ることもありました。同期である坂本さんと井上さんは、いままで互いに同じチームを組みたいと願いながらも叶わず、今回初めてチームを組めたことがとても嬉しいことだったので、後輩たちの心中を尻目に白熱した議論もまた楽しいものとなりました。
Q 今回お話を伺ったチームのみなさんは、どのようなきっかけから府大で学ぶことを選ばれたのでしょうか。
小さなころより動植物や昆虫への興味、自然全般に対する興味を持っている人が多く、環境について専門的に学びたいと考えたときに、どのような学びの場があるのかと調べました。ランドスケープのキーワードで調べていると、増田昇先生の名前が何度も挙がってきました。その道の第一人者と言われている先生方から授業を受けられるのはとても魅力的に思いました。
また、学内で実施しているオープンキャンパスでは、学生が設計した作品の展示に加え、都市や緑に関わる研究の説明や実際に大学の授業を体験できる模擬授業などを実施しています。
そのときに見た「地域家族」という作品を見て感銘を受けました。また、武田重昭先生のランドスケープデザインの模擬授業を受けて、こんな学びができるのだと初めて知り、自分も入学してこの分野の勉強をしたいと思いました。
Q大学での研究から見えてきた将来ビジョンについて教えてください。
坂本:建設コンサルタント業界を考えています。公共空間にいかに快適な人の居場所をつくりだすかについて、緑を起点に発想していければと思います。
井上:小さな敷地から環境のデザインをしたいという思いから、京都の造園業者で庭師になります。人の暮らしに最も近い庭の環境から、そのまち、その都市の緑地環境を見ていきたい。
盛岡:まだ具体的な将来像としての職場はわかりませんが、今回のコンペで培った経験を生かして計画や設計をしたいと考えています。
飯田:子どもの頃に神戸で被災し、高校時代には横浜で東日本大震災を経験しました。2度の被災を受け、防災など人の生活の基盤を支える仕事に就きたいと考えるようになりました。
Q研究室のいいところは、どういったところでしょうか。
研究は学生主体で進めていくのですが、先生からのサポートも学生一人ひとりへ充分にしてもらえるので、研究生活がとても充実したものになっています。
また、先生方の気さくな人柄から、学生が気軽に相談できる環境になっています。親切に教えてもらえることで理解もしやすく、研究を進める上でとても心強いです。
この研究室ではいろんなチャンスがありました。学生それぞれの興味、関心につながる道を考えて、先生方から学外活動の提案などもあります。
たとえば公園ボランティアやまちづくりなどですが、大学のカリキュラム以外で並行しておこなうボランティア活動や、コンペ提出へ向けての作成期間なども、手厚くサポートしてくださったので、無理なく両立した学びができまました。
こうした課外活動によって視野が広がりますので、将来の展望も見つけやすいと思います。座学以外の学びも多く、活気ある学生生活を送ることができます。
Q研究を進める中での苦労はありますか。
水、土、大気や生物などを専門に研究している学生が身近にいるので、自分たちの研究で行き詰まったりすると、相談に行きヒントを得ることができます。
互いに相談をして、共通の悩みから新たなアイデアが生まれることもあるので、専門的な知識を有する学生同士の横のつながりはとても大きいと思います。幅広い交友関係が築きやすいのも魅力のひとつです。
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研究ではたくさんの人と関わり合いながら作り上げて行くことになるので、友達を幅広くつくっておくといいですね。コミュニケーション能力も自然に身についていくようです。
互いに専門的な知識を共有し、育みながら学べる環境ですが、最後に「建築学科もあればよかったのになぁ~」と、みなさん口をそろえてつぶやいていました。
【取材:塩根 春華(広報課)】
【取材日:2017年6月5日】※所属・学年は取材当時