大阪府立大学は平成26年度に、文部科学省「大学教育再生加速プログラムAcceleration Program for University Education Rebuilding : AP」に採択されました。

このプログラムにより、本学はアクティブ・ラーニング科目を専門教育において体系的に位置づけるための一部先行導入やシステム構築、ラーニングコモンズをはじめとした学修環境の整備を進めております。

また、これらの学修成果を可視化するため、学生調査やルーブリックを取り入れた成績評価方法の普及などを行っております。

▼大学Webサイト 平成26年度採択事業/文部科学省大学教育再生加速プログラムについて
http://www.osakafu-u.ac.jp/affiliate/project/h26/#3

そしてこのたび、APの取組の一環として、全教員を対象とした「アクティブ・ラーニング手法導入状況調査」を行いました。その中で特徴的な取組を実践されている教員にインタビューを行い、ノウハウを共有する「Active Learning Reports」を刊行しました。

▼「Active Leaning Reports 第1号」
http://www.ap.osakafu-u.ac.jp/alr1/

本記事では第1号掲載レポートより、「学生の探究心を養う英語のディベート」という学びを実践されている、生命環境科学域 応用生命科学類の東條 元昭 教授のインタビュー記事を紹介します。東條先生

◆教員プロフィール
東條 元昭(とうじょう もとあき)教授 生命環境科学域 応用生命科学類 植物バイオサイエンス課程
研究分野:植物病理学、土壌微生物学
担当授業科目:「植物病理学」、「基礎微生物学」ほか

(テーマ)学生の探究心を養う英語のディベート

Q. 先生の教育観について、お話しいただけますか?
文章で知識を得ることももちろん重要ですが、まずは経験が先にあった方が良いと私は考えています。学生には自分で必要性を感じてから知識を得ていくというようなことを体験してほしい。特に自然科学の学びでは、観察・実験が大前提になりますので、まずはそれをやりたいと思ってほしい。そう思わせるための授業だと思っています。

学生は、将来的には海外の人々とやり合いながら仕事をしないといけない。どうせしないといけないならせっかくなら楽しんで仕事をしてほしい。そのためには、まずは英語を使う体験してもらう。このような思いから英語のディベートを授業に取り入れるようになりました。

東條先生インタビュー

Q. なぜ、「英語」でのディベートを導入したのでしょうか?
日本語でディベートをさせると学生はすごく楽しんで、レベルの高いことをどんどん言い合います。学生の学習のことを考えるとこのままで良いのではないかとも思ったのですが、いまどきの学生は、高校の授業でもそれなりにディベートを経験しています。日本語だけでは彼らはハードルが低めに感じ過ぎるのではないかと思ったのがその理由です。

そしてもう1つ、この授業(「植物保護学」)を受講している学生は大学3年生ですから、それを英語でやったら格好良いよなと彼らも思うのではないかと思い、英語のディベートを1つの目標にするのも良いのではということで導入しました。

Q. ディベートの意義について教えていただけますか?
従来の講義方式では、教員が中心となって知識をほぼ一方的に伝授していくという形を取ります。それに対してディベート方式では、教員があくまで輪の中の1人になり、教員と学生の間にやり取りが生じます。やり取りの回数が増えることで、学生と教員双方が色々な情報を真剣に考える機会が増え、学生は自分の個性に気づく機会が増えると思います。

また、ディベート方式と講義方式のメリット・デメリットは、「知識・論理の系統的習得」「知識の正確さ」「学生の相互刺激」「学生の気づき」の4つから捉えることができると思います。講義方式だと先の2つ(「知識・論理の系統的習得」「知識の正確さ」)の点でメリットがあり、成績を上げるには効率的です。

ディベート方式では後の2つ(「学生の相互刺激」「学生の気づき」)にメリットがあり、学生の自己成長を促す効果があります。授業科目によって教えるべき内容が異なりますので(基礎重視か応用重視か)、その特徴に合わせて講義・ディベートの割合を工夫していくことが大事だと思います。

Q. ディベートは学生の態度にどんな影響を与えますか?
学生は、ディベートの回では教員が指示していないのに予習をしてきます(発表の資料としてA4用紙1枚にびっしり英語を書いてきました)。これは彼らの学習時間の増加を表していると思います。また、ディベートの時間は、ほとんど遅刻・欠席がありませんでした。

一方、講義方式の授業に戻ったとたんに、面白いように「普通の教員と学生の関係」に戻りました。学生は私語をするし、欠席、スマホを持っての入退出をします。このギャップについて考えてみたのですが、学生はディベートの授業で感じる緊張感を楽しんでいると思います。だから授業にも出るし、予習もしてくる。それだけでなく、彼らがディベートの授業で一番関心があるのは、他のクラスメイトが何を考えているか、何を話すか、ということだと思うのです。

授業の場でお互いに真剣な話をし合う機会を作ることで、学生の相互刺激、学生の気づきの機会が増えていると思うのです。英語でのディベートを授業に導入することでそういうメリハリがわかりました。

東條先生インタビュー▼参考リンク
文部科学省AP大阪府立大学プログラムWebサイト

生命環境科学研究科 植物生体防御学グループ Webサイト

日本農業新聞に掲載!

街の中で体験学習!「駅前子ども教室」(河内長野市)

【取材日:2017年4月26日】※所属は取材当時