羽曳野キャンパスにて、総合リハビリテーション学類 栄養療法学専攻(地域保健学域)4年が受講する、「総合栄養療法学演習」を取材しました。

この授業では15回の授業を通じて、これまでに修得してきた管理栄養士に必須な科目の内容をもう一度確認しこれらの知識の定着を図るとともに、これらを有機的に結び付けて理解し、管理栄養士としての実践力を修得することを目的としています。

取材した1/24は4年生の最後の、すわなち大学生活最後の授業という事で、「管理栄養士に必要な事」と「世間から求められる管理栄養士像」、さらに「その理想像にどうやったら近づくことが出来るか」をグループに分かれて話し合い、発表をするという授業内容でした。

まずは今回の授業に対する思いを大関先生にお伺いしました。


管理栄養士は戦後に生まれた職業であり、当時食べられない状況から「どうやったら栄養を取る事ができるか」、アメリカからの支給物資である小麦や油などを使い食べ方を知らせる事が主な業務でした。

こうして生まれた管理栄養士という職は高度経済成長期になると飽食の時代となり、「役割を終えた」とまで言われていましたが、人々は次なる壁にぶつかります。それは飽食による肥満やそれに伴う病気です。

この時私たちは食の改善により健康を考える為、「このような食事をとるべきだ」という「べき論」を用いて食の大切さを説きました。

しかし一方的な知識の押し売りはあくまで人々の習慣を変えるきっかけにしかなりません。現在この「べき論」は見直され、管理栄養士は一方的なコミュニケーションではなく、現場の他職種と話し合い、対象者の声を聞き、寄り添う事で食の面から健康を提案する必要があります。つまり今は管理栄養士の第二変革期との言える時代なのです。

変革期の真っただ中に飛び立って行く4年生には、これからの管理栄養士としての在り方を再認識してもらい、グループで話し合う事で視野を広げてほしい。また社会に出てから色んな人の意見を聞き自己を深める練習をしてほしいという思いがこの授業にはあります。


その後は各班に分かれ、

1、これからの管理栄養士に必要なもの(知識、能力、経験など)

2、世間から求められるものは何か?(管理栄養士に期待されていることは何か?)

3、これらに対して自分が卒業の時点でどこまで身につけているか?

上記の課題に、病院、行政、学校、企業など管理栄養士が活躍する幅広い場面・立場から考え、意見を出し合い各々の形式で発表していきます。

発表用模造紙にはピラミッド型やパーセンテージで重要度を示したり、管理栄養士を樹に例えたりと班ごとで非常にユニークです。

これから数か月後の就職を控え、まずは生活リズムを整え自己管理と自立した生活、そして知識の習得・仕事への責任感やコミュニケーション力が管理栄養士に必要な事として多く上げられました。

「正しい情報の発信」や「実生活でも簡単にできる栄養管理の方法」が世間から求められていると発表する彼女たちでしたが、その一方で,良き妻・母となって、同じような立場の女性にアドバイスできるようになることも大事、と女性ならではの意見も。

これから足りない部分を補う為に栄養士会での勉強や、仕事をしながら経験を積むという前向きな姿勢と、今の自分達には意欲と笑顔しかないが、まずはその最大の武器で乗り切るってみせるという頼もしい言葉も聞く事が出来ました。

「仕事をしながら学習意欲を保つ事は本当に難しい事だが、学生時代の事を思い出して頑張ってほしい。また、同じ立場で話ができる相手は今後非常に少なくなる為、クラスの友人をこれからも大切にしてほしい。」と矢澤先生の激励の言葉で締めくくり授業は終わりました。


最後に、学生さんにこの4年間を振り返った感想をお聞きしました。

1・2・3回生の時は自分が勉強している事が将来の何に繋がるか分からず葛藤した日々が続きました。

4回生になり実習が増える事で将来がはっきりと見えて来て、頑張らなくてはならないとの思いに駆り立てられた事を今でも思い出します。

4年間を振り返り、私は府大の栄養療法学専攻に来てよかったと思っています。他大学に比べここは少人数でクラスの皆と距離が近いですし、先生方も非常に親身になって下さいました。
私は就職ではなく大学院への進学という選択肢を取りました。大学院で学ぶ事は少し違うのですが、管理栄養士での勉強を役立てようと考えていますし、何よりこの今の気持ちを忘れないようにしようと思っています。

アメリカではAIに代わる事のない職業ランキングTOP100の中に入る管理栄養士。ロボットではなくヒトがヒトに寄り添う重要性を求められる事で管理栄養士は大きな変革期を迎えていますが、彼女達の眼差しは不安よりも希望で満ち溢れていたように見えました。

【取材日:2018年1月24日】※所属は取材当時