羊の腸にひき肉を詰めている 学生ふたり

多くの食品は生のままでは食べられなかったり、加工なしでは保存できなかったりします。人類は長い歴史の中で、食品を長期間保存するための様々な技法を開発してきました。栄養療法学専攻(総合リハビリテーション学類)の実習授業「食品加工学実験」は、色々な条件で食品を加工し、その味や保存性を検討することを目的に実施しています。
卒業要件ではない選択制の科目にもかかわらず、3年次生31人中、25人が受講している大変人気の科目を取材してきました。

 

実習室で班に分かれて調理をしている学生たち

今回はこんにゃくと、肉類の加工例としてソーセージを作製し、さらに、保存性向上と香りづけのためにソーセージは燻製します。

 

こんにゃく粉を鍋に入れお湯で戻す調理中 「保存性を高めるため、肉類はハムやソーセージなどに加工されます。この実習ではソーセージ造りの一過程である燻製が香りづけの目的だけでなく、本来は長期保存を目的にしたものであることを理解した上で、実際に一連の加工工程を経験し、その原理と食品加工に対する理解を深めることを目的にしています。」
先生の説明が一通り終わると、一斉に作業に入ります。各班3名程度なのですが、こんにゃくの準備にかかる人、燻製の準備にかかる人、ソーセージの準備にかかる人と手際よく動き出しました。

 

色々な食材を入れた燻製機の中の様子外で燻製器を準備する学生たち

燻製にするのはソーセージ以外にも各自好きなものを持参してもよいということで、サーモンや帆立、ゆで卵やチーズなど一般的によく見かけるもののほかに、枝豆、トマトなどの野菜や、ポテトチップス、チョコレート、マシュマロといったお菓子類も燻製にしていました。

 

ソーセージ用のミンチ肉に味付けを加える作業師範台の天井鏡におつる先生のお手本また、ソーセージやこんにゃくも基本の作り方を守っていれば各自が好きな味付けをしてよいということで、ソーセージにはパプリカやカレー粉、レモン、そして先生いち押しのメープルシロップを試したり、こんにゃくには青のりや七味唐辛子、ゴマを入れるなど、それぞれ添加物の種類と量を考えながら配合し、各班オリジナルの物に挑戦していました。

先生方は学生の様子を見回りアドバイスをしながら、特に難しいところはお手本を見せてくれます。教室の正面にある師範台の天井には鏡が取り付けられていて、前に行かなくても先生の手元が良く見えるようになっています。

今回は羊の腸にミンチ肉を絞り出すところと、それを縛ってソーセージの形にするところを見せていただきました。

羊の腸にミンチ肉を絞り出すところ 紐で縛ってソーセージの形にするところ

先生の手にかかると、いとも簡単にソーセージができあがり、絵本で見たことがある何本も繋がったソーセージの姿に、あちこちから「おおっ」と感嘆の声があがっていました。

 

■お手本を見た後は実践です

悪戦苦闘しながら羊の腸にミンチ肉を絞り出す学生

ソーセージはミンチ肉を絞り出す人と腸を送り出す人の息が合わないと、細くボソボソになってしまったり太すぎて破れてしまったりします。
はじめは細くて薄い腸の扱いに苦戦したり、ミンチ肉を絞り出すのにも想像以上に握力が必要で手が震えてきたり、「えー!」「うわぁ!」「もう無理!」と声があがっていましたが、次第に慣れていき「上手くできた!将来はソーセージ作ってカフェをしようかな」と言う声も聞こえてきました。

詰め終わったソーセージをもつ学生

氷水につけてられたソーセージ

形成できたソーセージはバクテリアの繁殖を抑えるため、すぐに氷水につけて冷やします。

そして、中心温度が75度以上の状態を1分以上キープできるように温度計で測りながら茹でた後、燻製にしていました。このような温度管理は食品衛生法上きっちりと定められているそうです。

 

片手に持って こんにゃくを切る学生 こんにゃくも茹で上がり、薄く切ってお刺身こんにゃくとして仕上げる班や以前の実習で作った味噌を使ってこんにゃく入り味噌汁にする班、フライパンで焼いてステーキにする班など思い思いに仕上げていました。

刺身こんにゃく

初めての燻製は少し難しく、思ったように仕上がらなかった班もあったようですが、「水分の多いものは難しかった。冷めると燻製の香りが飛んでしまったから、温かいときにいただくか、もう少し燻製時間をかけた方が良かった。この食材は冷燻にしたら良いかも。」など、きちんと課題もみつけていました。

* * *

調理した料理を食べながら感想を言い合う学生たち

今回2コマ(3時間)授業を見せていただいて一番感心したのは、学生の手際が本当に良いことと、きちんと考えて動いていることです。料理はマルチタスクと言われますが、ぼーっと指示を待っている人は全くおらず、皆自分で考えて能動的に動いていました。こんにゃく精粉やミンチ肉を混ぜながら茹でるためのお湯を沸かしたり、使い終わったボウルや包丁を洗ったり、段取りよく動いているので、2コマの授業の中で「こんにゃく」「ソーセージ」「燻製」という3つの調理目標はあっさりクリアし、さらに以前に食品加工実験で作った味噌を使って味噌汁を作ったり、余ったミンチ肉をハンバーグにしたり、予定にない料理も仕上げて試食し、片付けまできっちり終えていました。

栄養学療法専攻の学生たちは食品を加工する実験やこのような多くの実習を通して栄養や食品の取り扱いはもちろん、自ら考えて積極的に動く姿勢がしっかり身についているので、社会人として活躍するための基礎ができていると安心しました。

▼栄養療法学専攻サイト

▼Webマガジン ミチテイク・プラス(栄養療法学専攻)

 

【取材:羽曳野キャンパス事務所 学生グループ】
【取材日:2019年7月25日】※授業内容等は取材当時