大阪府立大学では知識伝達の講義型授業から、学生が主体的にアクティブに活動するアクティブラーニング型の授業を通じて、よりコミュニケーション力のある学生の育成をめざす授業を増やしています。そういった授業の一つ、「栄養教育論実習」を取材しました。
総合リハビリテーション学類 栄養療法学専攻(地域保健学域)の3年27人が受講する授業で、大関知子教授が担当しています。
栄養教育に必要なカウンセリング技術や栄養調査方法等の技術を修得するのが大きな狙いの授業で、事前の準備学習から当日の運営、結果のまとめまで、一連の流れを学生自身が作り上げる学びによって、授業の中でアクティブに動きコミュニケーション力を身につけるのも目的のひとつです。取材した11月8・9日(水・木)は、中百舌鳥キャンパス学生食堂で「食生活相談会」と銘打った実習型の授業に取り組みました。この実習は5年目です。
この栄養療法学専攻は、主に管理栄養士や食育の指導者(栄養教諭一種)をめざすコースで、日頃は羽曳野キャンパスで講義や調理実習中心の授業を受けています。この授業で3年生たちは、これまでの授業で習得した基礎知識を踏まえ、中百舌鳥キャンパスの学生食堂を訪れる学生と面談し、よりよい食生活に向けた栄養教育のアドバイスを行います。実際に相談・指導に当たるグループと、勧誘・誘導に当たるグループの2つに分かれて、食堂を訪れる学生らに応対しました。
実習に協力してくれた学生は、(自分が)最近よく食べているメニューを食品模型からセレクト、食育SATシステム機器でそれらメニューの栄養バランスを測定します。次に身長・体重の数値や運動の有無、食生活傾向を記入したアンケート調査を資料に、テーブルで指導・相談です。栄養療法学専攻の学生たちは2人1組になり、協力学生から食生活の傾向について聞き取り、アンケート調査などと照らし合わせながらアドバイスを行っていきました。
例えば、「運動はあまりしていないのにカロリーが高いのではないでしょうか」「選ばれたメニューはメーン料理の塩分が多いようです」「朝食を摂らないと昼食でまとめ食いをするので血糖値が急に上がり良くないです」など、かなり突っ込んだアドバスもありました。また「野菜から順番に食べると血糖値が上がりにくい」など専門的な提案もあり、協力学生はそれらにうなずいていました。
また、栄養療法学専攻の学生たちは、この日の食生活相談会に向けて、参加した人たちに参考してもらおうと小冊子『かんたん! お野菜レシピ』と『朝ごはんレシピ集』を作成し、参加者に配布しました(写真)。
内容は、『お野菜』にはキャベツ・たまねぎ・にんじん・青菜・トマトやブロッコリー・.長芋・きのこなどの素材ごとに考案した簡単レシピ、『朝ごはん』には、チャーハン・ドリア・お茶漬け・サンドウィッチ・トースト・グラタン・どんぶり・スープ・カレーなど、野菜を織り交ぜた工夫いっぱいのレシピが写真入りで紹介されています。ひとり暮らしをしている学生の一人は「明日から参考にさせてもらいます」と持ち帰っていました。
大関教授は、「相談会の進め方や材料、資料の作成と準備、現場での役割分担などすべて学生自身で話し合って決め、運営を行いました。講義で習った知識を実際の面談で生かすことができ、かつカウンセリングの難しさも体験できたのではないか。管理栄養士は突き詰めれば人を相手にする仕事、この取り組みによってコミュニケーション力が身についてくれれば良いと思います」と話します。
この実習に参加した学生は「自分の知識不足もあり、相談者から話を聞きだすのが難しかった」「初めは緊張したが、自分の言葉で対応して、落ち着いて話すことができた」と述べ、中百舌鳥キャンパスの学生に健康のことにもっと意識を持ってもらいたいと口をそろえて話していました。栄養療法学専攻では、今後もこの実習を継続していく予定としており、LINEやチラシなどで効果的に周知し、より多くの人に参加してもらうようにしていきたいと考えています。
【取材日:2017年11月8日】 ※所属・学年は取材当時